第2章:測定環境別・おすすめの参照電極
2-1 水溶液系での測定:銀塩化銀電極の特長
日常的に広く使用されるのは、銀塩化銀電極となります。当社では下記の電極を取り扱っております。
① RE-1B 水系参照電極(Ag/AgCl) 商品コード:012167
内部溶液が3 M NaCl (塩化ナトリウム)溶液で取り扱いやすく、コンパクトな参照電極です。内部溶液にNaClを用いる主な理由は、特定の測定環境における液絡部の目詰まりを防ぐためです(1-3章参照) 。液絡部分にイオン透過性ガラスを用いているため、主に酸性から中性領域で用いてください。アルカリ領域で用いますと、液絡部のイオン透過性ガラスが徐々に溶け、使用できなくなります。
② RE-1BP 水系参照電極(Ag/AgCl) 商品コード:013613
当社での新しいスタンダードタイプの電極です。より安価で耐薬品性と耐衝撃性に優れたポリメチルペンテンを使用しています。液絡部はセラミックを使用しており、弱アルカリ性までご使用いただけます。
③ RE-1CP 飽和KCl銀塩化銀参照電極 商品コード:013691
参照電極の内部液が飽和KClで満たされた電極です。構成イオンであるカリウムイオン と塩化物イオン の易動度(拡散速度の差が小さい)がほぼ等しいため、被検液との間で発生する液間電位差を最小限に抑えられ理想的な参照電極です。一方で、被検液中のアニオン(過塩素酸)との反応で溶解度の低い(過塩素酸カリウム)が液絡部に析出し、目詰まりが発生する事があります。この場合、測定結果に影響(ノイズが乗るなど)を与える可能性があるため、使用する被検体の組成に注意する必要があります。
2-2 水溶液系での測定:カロメル型、アルカリ用電極の特長
水銀・塩化水銀・硫酸水銀からなる電極は電位安定性に優れています。水素ガスを用いる標準水素電極SHEの代わりとして、近年まで日常的に広く使用されてきた水系参照電極の一つです。ただし、電極の構成に水銀が使用されているため、環境汚染の観点から使用機会が減少傾向にあります。
① RE-2BP カロメル型参照電極 商品コード:013693
白金線と接触した水銀と塩化水銀からなる水系向けのカロメル型参照電極です。内部液は飽和KClで満たされており、非常に安定した電位を示します。電極の容器にはポリメチルペンテン樹脂が使用されており、外部からの衝撃にも強い電極です。
② RE-2CP 参照電極(※Hg/Hg2SO4系) 商品コード:013692
この電極は、水銀 タイプ(カロメル型の一種)であり、内部溶液に飽和硫酸カリウムが使用されています。被検体が塩素成分(KClのCl-)を嫌う分析に適しています。電極の容器にはポリメチルペンテン樹脂が使用されており、外部からの衝撃にも強い電極です。
③ RE-61AP アルカリ用参照電極 商品コード:013694
この電極は、主にアルカリ溶液中で使用するために開発されたカロメル型参照電極の一種です。電極反応は下記となります。
上端部にはねじ込み式のキャップを取り外し、アルカリ性の溶液を充填して使用します(商品には内部溶液は付属しておりません)。充填後は、1日程度内部液と同一の溶液に浸けてからご使用ください。
2-3 非水溶媒(有機)系での測定:銀/銀イオン電極の自作とIUPAC推奨の補正方法
最も一般的に使用される非水溶媒系参照電極が、Ag/Ag+参照電極です。ガラス管の中にAg+イオンを含む被検体と同じ溶媒に各種支持電解質(濃度0.1 M程度)を充填し、その中に銀線を浸けて使用します。
① RE-7N 非水溶媒系参照電極 商品コード:013848
ビー・エー・エスの電気化学測定用非水溶媒系参照電極は銀/銀イオン(Ag/Ag+)で、お客様ご自身で調液及び組み立てて頂く商品となります。内部溶液の一例として0.01 mol/L 硝酸銀(I)(AgNO3)および 0.1 mol/L 過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)を含有する アセトニトリル(ACN)溶液がございます。詳しくは、こちらの調整手順のページをご覧ください。この一例の様に、測定系に合わせた内部溶液をご用意頂く事で、様々な実験にご利用頂けます。サンプルホルダー 6 mmφ(2本入り)をご使用いただくことで溶媒別の参照電極を自作していただくことも可能です。実験に合わせた溶媒や支持電解質の組み合わせが可能である一方で、非水溶液系では、参照電極の電位が溶媒によって大きく変動する可能性があります。
電位基準の設定(IUPAC推奨)について
非水溶液系では、参照電極の電位が溶媒によって大きく変動する可能性があるため、絶対的な電位基準として内部標準物質を用いることが推奨されます。
- IUPAC推奨の基準:
国際純正・応用化学連合(IUPAC)は、測定の最後にフェロセン(またはビス(ビフェニル)クロム塩)を測定溶液に添加し、そのサイクリックボルタモグラムから酸化還元電位を求めて、これを基準(ゼロ点)にすることを推薦しています。フェロセンの酸化還元電位は溶媒の影響を受けにくいため、非水溶液の電位基準として用いられています。

2-4 プロトン(H+)が関わる反応に:可逆水素電極(RHE)の利点
RHE 可逆水素電極(※RHE:Reversible Hydrogen Electrode) 商品コード:013597
可逆水素電極については、1-3章で述べましたが、プロトン(H+)が関与する電気化学反応の研究において、電極電位のpH依存性を排除できるという点で極めて重要な参照電極です。ビー・エー・エスでは、強酸の電気分解によって発生する水素ガスを利用して使用する簡易型可逆水素電極キット」(RHEK)を販売しています。水素ガスを常に流す必要が無く、貯めた水素使えるよう工夫されているため、取り扱いが簡単です。
また、ビー・エー・エスでは、H2G1 ポータブル水素発生装置を販売しております。ポテンショスタットが無くてもRHEKに水素ガスを簡単に充填することができます。
