第3章:【実践編】失敗しない電極選定のポイント
3-1 水系の選定基準:液間電位差や支持塩の選び方
2章で各種電極の特長を説明しましたが、実測時には下記を参考に選定してください。
- 参照電極は、長時間にわたり安定かつ一定の電位を示すことが必須要件。電極電位の安定性は、電極内部の酸化還元化学種が平衡状態にあることによって維持されます。
- 測定溶液と参照電極内部液との間に生じる液間電位差を最小限に抑える為、内部液にはイオン易動度(移動度)が近い KCl や KNO3 などの塩を高濃度で使用します。
- 被検液中のアニオンとして過塩素酸がある場合には、NaCl を用いたRE-1BP 水系参照電極(Ag/AgCl)を使用します。
- H+が関与する電極反応(例:燃料電池触媒評価)を調べる際は、RHE 可逆水素電極を選択することで、その電位が溶液に連動するため、電極電位とRHEの依存性が相殺され、過電圧を即座に求めることができ、解析が非常に容易になります。
- 強アルカリ溶液で測定を行う場合は、RE-61AP アルカリ用参照電極を選定してください。液絡部にイオン透過性ガラスを使用している電極はガラス部が溶けてしまうため、セラミックを使用した電極を用いるなどの対策が必要です。
- 塩化物イオンの混入を避けたい場合は、RE-2CP 参照電極をご使用ください。
3-2 非水系(有機溶媒)の選び方と作成のポイント
- 2-3章で述べた、銀/銀イオン(Ag/Ag+)電極を用います。
- 同電極の標準電極電位は溶媒により大きく変動しますが、フェロセンの酸化還元電位は溶媒の影響を受けにくいため、この補正を用いる事が一般的です。
- 一般的な支持塩:有機溶媒に溶け、大きなイオンを持つ支持塩として、テトラアルキルアンモニウム塩が主流です。例えば、過塩素酸テトラエチルアンモニウム(TEAP)、過塩素酸テトラブチルアンモニウム(TBAP)、六フッ化リン酸テトラブチルアンモニウム(TBAPF6)などがあります。これらの対アニオンには、過塩素酸イオン(ClO4-)、BF4-、PF6-がよく用いられます。
- 溶媒を選択するうえでの注意:溶媒は、測定対象物が溶けることに加え、酸化または還元生成物も溶解し、支持電解質を溶解して十分な導電性を与え、かつ広い電位範囲で安定であることが求められます。また、測定対象物が酸化還元されてイオン種になった場合、そのイオン間の相互作用は溶媒の誘電率に大きく影響されます。誘電率が低い溶媒では、イオン対や会合体が形成されやすく、電気化学的挙動に影響を与えますので注意が必要です。
- お勧めの有機溶媒:誘電率が高い溶媒を使用することは、支持電解質を十分にイオン解離させ、溶液抵抗をできるだけ小さくする上で有利です。アセトニトリル(AN)、ジメチルフォルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)があります。プロピレンカーボネート(PC)は、リチウムイオン電池の研究にも用いられます。ただし DMF や ジクロロメタン(DCM)は、銀イオンとの反応性や溶解性の問題から Ag/Ag+ 電極としては控えた方が良いでしょう。
3-3 特殊環境下での参照電極の注意点
ビー・エー・エスで販売している参照電極は、常温(25°C)での使用を前提として販売しておりますので、それ以外での動作保証は行っておりません。塩橋やダブルジャンクションチャンバーを用いて測定液から参照電極本体を隔離するなどの対策をお勧めいたします。参照電極の電位は絶対温度(T)に依存するため、温度管理は非常に重要です。低温で測定を行う場合は、参照電極の内部液に含まれる塩の溶解度が徐々に低下し、塩が結晶化してしまう場合もあります。
3-4 参照電極選びのフローチャート:質問に答えるだけで最適な電極を選定
3-1章から3-3章の説明を参考に、YESかNOをお選びいただくことでお勧めの電極をご案内するフローチャートを作成しました。参照電極選びが初めての方はご参照下さい。選定後にRE-**をクリックすると商品ページに移行致します。
簡易型可逆水素電極キット(RHEK)等、ダブルジャンクションチャンバーを使用する事で使用できる範囲が広がる場合があります。詳しくはお問い合わせください。
