第4章:初心者が陥りやすいミスと対策
4-1 電圧降下(E = IR)による誤差:溶液抵抗が測定結果に与える影響
ポテンショスタットに於いて、参照電極が作用電極の電位を規制する事は1-2章で解説いたしました。ただし、参照電極と作用電極に距離があると、参照電極と作用電極の間に存在する未補償溶液抵抗(Ru)に電流(I)が流れることで電圧降下(I×Ru)が生じ、ポテンショスタットが設定した電位よりも実際に作用電極に印加される電位が差し引かれた値となります。
この問題を回避するためには、IR補償機能が付いたポテンショスタット(ALS600Fシリーズなど)をご使用ください。IRによるピーク電位幅の広がりは、電子移動速度(ks)が遅い(非可逆系や準可逆系)場合に見られる現象と類似しています。もしこの影響を適切に評価・補償しない場合、実際には速い電子移動速度を持つ系であるにもかかわらず、電気化学反応が遅い(可逆性が低い)と誤って結論づけてしまう可能性が生じます。
4-2 電極の劣化と目詰まり:ノイズや異常な電位シフトの原因と対策
実験する際は、事前に使用する参照電極の電位が本来の電位を満たしているか確認を行ってください。
ポテンショスタットは、参照電極に対する作用電極の電位をコントロールするだけの回路の為、参照電極の良し悪しは分かりません。参照電極のチェック方法はこちらのページをご覧ください。ビー・エー・エスで販売している参照電極には、電極毎に適切な保管方法が記載されていますので、それに従って保管を行ってください。
液絡部を一度乾燥させてしまうと、電極が使用できなくなります。また、液絡部が目詰まりしてしまうと、ボルタモグラムに小さなノイズが乗る事があります。ノイズの原因は環境(外部ノイズ)からをイメージしますが、参照電極自身がノイズ元となる場合も多々あります。
また、参照電極先端部に気泡が付着したり、ガラス管内の先端部に気泡があると、電位制御が行えなくなります。このような場合、作用電極に大きな電位がかかり電極を破損させることもあるので、測定前には必ず気泡の付着が無いかチェックを行ってください。
4-3 水系と非水系の混用厳禁:液間電位差による測定不良を防ぐ
水系参照電極を非水溶媒(有機溶媒)中で使用すると、水と有機溶媒の間に大きな液間電位差が発生し、正確な電極電位を知ることが難しいため、使用しないで下さい。
